近接している場合はあらかじめ抜髄。
奥歯の根にのう胞

日付、時間:2003年2月11日 1:32 氏名:  S.S   
所在都道府県:  東京  職 業:  学生  年 齢: 22歳      性別:  male

のう胞 質問:
 先月の終わりに,下の奥歯の根にのう胞ができてると診断され,今月末に摘出手術すること になりました。今は,根管治療だと思いますが,根の治療を自宅近くの歯医者でうけておりま す。
それにあたって,神経を取ると言われたのですが,どういうことなのでしょうか?
普通取るのですか?
歯の治療で神経を取るのは最終手段だと聞いたことがあるのですが。

 あと,僕は下の歯が普通より足らず,奥に親不知ともう一つずつ埋伏歯があるらしいのです が,のう胞の大きさと場所から考えて,確実に摘出するために両方抜くことになると言われま した。それは特にその後問題はないのでしょうか?
根を切るのは危険だということですが,ほかに気を付けなければならないことはありますでし ょうか?
急な出来事なのでとても不安です。そもそも祖母は摘出しないでいいと言われたらしいのです が。どうかよろしくお願いいたします。

回答
 歯髄の壊疽や腐敗が原因で、根尖部分に膿が貯留したものを根尖病巣といいます。一方で、 歯髄の壊疽や腐敗とは無関係に発生する膿の袋をのう胞といいます。こののう胞は、発生原因 や発生場所によって様々な種類と名称で呼ばれていますが、根尖部分に近い位置に存在する のう胞を歯根のう胞と言います。
 ただし、根尖病巣と歯根のう胞は区別し難く、時には混同されて表現されたり、実際に誤っ て診断されたりしているようです。最終的には病理検査によって区別されるもので、臨床上で の区別がつかない場合が多いのも事実です。

 さて、抜髄の可否についてですが、明らかに根尖部分と距離があれば摘出後経過をみて抜髄 という判断をすることもありますが、近接している場合はあらかじめ抜髄するケースが多いよ うです。一つは、根尖病巣である可能性を疑っているからです。もう一つは、例え歯髄の壊疽 や腐敗だとしてものう胞摘出に際して根尖部付近の神経を切断してしまって歯髄の死を引き起 こす可能性が高いと判断されるからです。
 抜髄の可否については、私も賛成ですが少し心配なのは抜髄の技術です。私も口腔外科出身 ですが、一般に口腔外科の先生は抜髄の腕が悪い…余計なお世話かも。

 親知らずや過剰歯の抜歯についても賛成です。狭い場所にそれだけ色々とあれば、近くを 通る下顎神経に近接しているはずですので、神経の損傷が懸念されますが、これについては、 担当されている先生にも相当なプレッシャーがかかっているはずですので余り深く追求しな い方が良さそうです。


返信:2003年2月12日 20:42
 11日にのう胞について質問をしたものです。早速のお返事ありがとうございます。
 神経は、自宅近くの歯医者で抜くことになっています。金曜です。大学病院の先生は「下顎 のう胞」とおっしゃっていました。のう胞が神経を圧迫しているということで、それもあって 早めに摘出することになりました。そういう場合ではやはりとったほうがいいのですね。
先生はなるべく今の歯を残すようにしたいが、もしかしたら最悪抜くことになるかもしれな いとおっしゃっていました。それについてはもうお任せするしかないですが、残せたとして 気をつけるのはやはり根を切らないようにということでしょうか。
他に気をつけなければならないことはありますでしょうか?

 あと場所としては左下の6番ということになるのだと思いますが、顎が狭いようなので、奥 のほうで、また2本埋伏してるという事情の下では、出血のほうは通常ひどくなるのでしょう か?
神経も近いということで、細心の注意は払うが、出血がひどくなる恐れもあり、その場合は輸 血もありうるといわれました。最近の事件から、輸血については不安があります。 どうか先生のご了見をお聞かせください。

回答:
 最近は訴訟が多くなっていますので、術前に聞いた・聞かなかったでもめるケースが多いよう です。個人的には困った風潮だと思っています。  手術をして起こり得る可能性を限りなく列挙しなくてはいけないということは、手術する者に とってとんでもない労力と苦痛であると同時に、それを聞いた人は限りなく不安になってしまい ます。「手術には何らかのリスクは付き物」程度の説明で済んでいた昔の方が良かったかも知れ ませんね。最近の世相だからしかたないか。

 というわけで、輸血の可能性だって絶対ゼロではないから言っているだけだと思ってください。 しかし、仮に輸血が必要となった場合、確率何%でエイズなんかになるかもしれないけど、輸血 しなかったらほぼ100%死ぬってことだから、確率的にどっちが正しいで判断しないと仕方ないで すよね。

 そんな確率が限りなくゼロに近い心配より、抜髄の成功率が50%という方が心配かもしれま せん。もっとも、命と歯一本とだから比較にならないかも…。


返信:2003年2月13日 2:48
 のう胞のことで2度メールをいただいたものです。
実は僕は司法試験受験生で、今も勉強の真っ最中だったんです。去年は初受験で択一には受か ったのですが、論文で落ちたので、今年は結構頑張ってました。なのでこういう状況になって あせってるんです。
 病院の先生には、これがあとでいい経験になるかもしれないから、インフォームド・コンセ ントというか、この機会に自分で体験して感じてみるといいとおっしゃっていただきました。 自分のことで、しかもいきなりの出来事なのでそう簡単には整理がつかないのですが、なるべ く多く調べて、専門の方の話を聞いて、そしてそれについて担当の先生がどういう判断をして いるのか、患者として、人間として知っていこうと思いました。
 このたびは無知な自分にご助言をいただき、ありがとうございました。またその後について 何かありましたら、質問させていただきたく存じます。それでは失礼いたします。

回答:
 司法試験受験生ですか。それを意識して過剰な?説明だったかもしれません。説明におびえて 治療を放棄したばかりに状況を悪くした例もありますので、インフォームドコンセントの弊害み たいな部分があるということを体験してしまいましたね。
 考え様によっては時期的に助かったと思って、早めに区切りをつけて司法試験頑張ってくださ い。一昨年のこの時期、質問された司法試験受験生は、その年の試験に合格されて今研修されて います。合格したら知らせてくださいね。健闘をお祈りもうしあげます。