お歯黒は平安時代に女性が成人になったしるしとしてはじまりました。主に貴族社会を
中心に発達したもので明治のころまで約1千年もの間つづき、女性だけでなく男性が
お歯黒をした時代さえあったと記録されています。
美意識の判断としては争いのあるお歯黒も歯の健康にとってはどうやらたいへん良かったようです。
まず、お歯黒をつける前に歯の汚れ、つまり歯垢をとらなければなりません。そのため、
自然にムシ歯の予防効果がありました。また、お歯黒の成分であるタンニンは
歯質タンパクを収れんさせて腐敗を防止します。
そして、お歯黒に使われる酢酸第一鉄の溶液はリン酸カルシウムを強化し、タンニン第二鉄は
歯の表面をカバー、どちらも歯を保護する役割をはたしました。
お歯黒は2〜3日に一度する必要がありましたし、人によっては毎日歯を染めていた人も
あったようです。お歯黒をしていた最後の人といわれたご婦人が、昭和51年当時秋田県に存住
されていました。当時96歳になるそのご婦人の歯を所見したところムシ歯がほとんどなく、
50歳台の歯齢であったそうです。